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ということで、記念小噺!
お侍です。
去年、書けなかったのでなんとしても今年は書きたかったのですー。
書けて満足!です。(書いて速攻upしているので、きっとミスが諸々ありそうですが…)
やっぱりボーガンは今年も夏バテ気味、ということで。
あ、去年の夏バテ話というのがparallelの「夏、惑う」と、先日log upした拍手お礼小説です。よろしかったらそちらも合わせてどぞ。

市赤はまんま夜仕様になりそうで(…)自重。


そして、昨夜の地震、震源地の東北の方は大丈夫でしたでしょうか。
震源地から離れた関東の我が家でも結構揺れて、びっくりしました。
前回の地震とは種類が違う、と言われたところで地震は地震なわけで。
あとはもう余震、更に二次災害で被害が広がらないことを祈るばかりです。

 こっちこっち、と手招く声に狭い通路を進む。土用の丑の日だけあって、店内は鰻を求める人で活気に満ち溢れている。
 靴を脱いで座敷にあがると、すでに先客2人の前には冷酒と先付けが置かれていた。
 そして、普段なら先陣をきっていくボーガンがのそのそと最後尾から現れると、一同を手招いた声の主はこのボーガンさんを見ると、夏になったと実感しますねぇと可笑しそうに言った。

「時間かかるから先に頼んじゃいましたけど、いいですよね?」
「ああ。」
「皆さんとりあえず、ビールでいいですかね?あ、ヒョーゴさんはお車で?」
「ああ。俺は茶でいい。」

 そう言って、お品書きと書かれた渋い色合いのメニューをパラパラと見ていたヒョーゴの眉が寄る。

「どれを頼んだんだシチロージ。」
「そりゃ…」

 せっかくだから特上ですよ、とにっこり笑う。特上の値段に目を走らせたヒョーゴが思わず口を開こうとするのをシチロージはまぁまぁと言って手で留めると、そのまま視線を横に座るカンベエ―――事務所社長に走らせた。

「今夜のお代はこちら持ちですから。」

 そう上機嫌に笑って言うシチロージと対照的に、本日の財布担当のカンベエははっきりと苦笑気味だ。だが、ヒョーゴの視線にふっと小さく笑うとまぁ、たまにはこういうのもよかろうと言って通りすがりの仲居を呼んだ。


 ビールで乾杯し、先付けと骨のからあげをポリポリと食べながらうな重が来るのを待つ。やがて各々の前に置かれたお重に、知らず知らず喉がなる。

「では社長」
 すっとヒョーゴが社長の方を向く。一同、それにならう。
「ご馳走になります。」
「ゴチになりまっす!」

 言うや否や、メンバーは到着したてのうな重の蓋を我先にと開ける。開けた途端、ふわっと鰻のいい匂いが鼻先にあがってくる。中には見るからに肉厚の鰻の蒲焼がどんと鎮座しており、下の米が見えない。箸を入れればすっと身は解れ、口に含めば鰻の甘さと程よい脂が口中いっぱいに広がる。たまらず、モヒカンが叫んだ。

「うーめーぇー」
「すっげ、ふわふわしてるよこの鰻!!」
「さっすが、注文してから捌く鰻は違うねぇ。」
「ほら、お前も温かいうちに食えよ。」
「ああ…うん…。」

 箸を手にしたものの、なかなか口に運ぼうとしないボーガンに、隣に座るセンサーが気遣わしげに言う。

「食いたいのはやまやまなんだけどよ…。」
「いいじゃねぇか、こいつが食わないなら俺らで食っちまえば」

 これだからひ弱な男はダメだねぇなどといいながらモヒカンが豪快に白飯をかっこむ。タレが染みていて、これだけでも十分美味い。そんなモヒカンに傍にいた2人からツッコミが入る。

「…お前はもうちょっと味わって食うべきだな。」
「まったくだ。」

 やれやれ、と溜息交じりに言うリーダーとヒョーゴに何だよぉとモヒカンが軽くふくれたような顔を見せる。ヒョーゴはすっと別の皿をボーガンの前に滑らした。

「蒲焼がダメならこっちはどうだ。」
「…何スカこれ。」
「白焼きだ。そら、そのわさび醤油で食え。」
「いやでもヒョーゴさん俺に気にせずどう…。」
「食 え 。」

 ヒョ―ゴの有無を言わせぬ口調に、渋々ボーガンは一切れ小さい白焼きをつまみ、ちょちょいと醤油をつけて口に運ぶ。
 それを見届けてからよし、という言葉と共にヒョーゴは自分のお重の蓋をあける。それを見ながらボーガンの弱々しい声がヒョーゴに届く。

「ヒョーゴさん…。」
「何だ。」
「俺がこの時期食欲ないのなんか、放っておいていいですよ?」
「…。」
「ヒョーゴさんの冷めちゃってるんじゃないすか。」
「別に、ちょっと冷めたくらいで食えなくなるもんでもない。」

 それに、お前が食わないと落ち着かないのは俺だけじゃないようだしな。

 その言葉に今更ながら刺さるような視線を感じて皿から顔をあげれば、向かいからやっぱり己のお重に手をつけずにじっとこちらを伺うキュウゾウと目が合う。

「あんだよお前まで…。」
「食わないのか。」
「…食ったろ。」
「そっちは」

 手付かずのお重を顎でしゃくるように示され、ボーガンは小さく溜息をついた。
 来た時に耳に挟んだ言葉通り、結構な値段なのだろう。普段なら貧乏性丸出しで他のメンバーのようにがっつくところだが、どうしても、そんな気になれない。
 すると、シチロージがはいはい失礼しますよ、と小ぶりな茶碗を持って現れた。
 そして、ボーガンの手付かずのうな重から三分の一ばかり移すと、そのままどこから持ってきたのか海苔とさらに薄茶色の液体が注がれる。

「…はい完成、どうぞ。」
「何すかこれ。」
「うな茶漬けです。」
「茶漬けぇ?」
「ええ。上からかけたのはだし汁です。これなら、まだサラサラッと喉を通るんじゃないですか。」
「…。」
「どうです?」
「…。」
「やっぱり召し上がっていただけませんかねぇ…。」
 困ったように笑うシチロージに対し、ボーガンは慌てて茶碗と箸を手に取った。シチロージの背後からは、夏とは思えない冷気と合わせて刺す様な視線が押し寄せてくる。
「いえいえ、いただきます!いただきますとも…!」

 よし、と満足気に呟く4人の監視から逃れるようにボーガンは茶漬けを喉に流し込む。
 こんなに無理してまで食う意味があんのかと思いつつ、ヒョーゴを始めみんなの心配もわかるだけに、ボーガンに反抗する手立てはない。
 身体が資本の仕事で、倒れて迷惑がかかっても困る。
 こんな鰻を食べるくらいでこの夏バテが解消されるならいくらでも食ってやろうじゃねぇかと半ばムキになってボーガンはカツカツと箸を動かした。

 それを横目に冷酒を嗜むカンベエに、すっかり鰻を満喫したモヒカンとセンサーが近づく。

「社長、すっげぇうまかったっす!!」
「ご馳走さまでした。」

 で、そのぉ、と小さく付け足された声に、カンベエはふっと笑うと2人を見た。

「そうだな。また来年、ここで食えるようにしっかり働いてくれ?」

 カンベエの言葉に、いい年した大人の男2人は、はーいと小学生のようにだが、多少の苦笑を交えて返事をしたのだった。





土用の丑の日ということで! 
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