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を、しました。
少しでも見やすく・使いやすくなっていることを願いつつ。


以下、豆腐な市赤市小噺です。
以前upした『午睡』の続きとなっております。

そしてもうすぐ七夕ですね…!!
おおお。日が過ぎるのが早すぎる。

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追記:
IE以外で表示確認するの忘れてた!!
で、慌てて見て色々画像の位置とかいじってみたんですが…色んな部分で狐さんが ひ ど い。
狐ユーザーの皆さんすみません…。
(侍のindexの画像の位置がIE以外設定効かないのは何でなんだろう…)


-----------------------------------------

「まだ機嫌悪いの?」

 赤木が居間の入り口の襖を閉めがてら、市川に声をかける。そして市川の返事を待たずにテーブルの上に夕餉のおかずを並べていく。コト、コトっと間を空けずに置かれた音で、赤木の両手が器で塞がっていたことは容易に想像がつく。そうなると、あのタン、といつもより乱雑に閉められた襖は赤木の足以外にない。ここで行儀が悪いと言えば、きっと肩をすくめてさらに笑うだけだろう。
 ミシミシと畳を移動する足音に、先ほどまで畳に無造作に投げ出されていた白くすらりと伸びた足を思い浮かべ市川は軽くかぶりを振った。

「…まだ足が痛ぇんだがな。」

 嫌味ったらしく乾いた手で足をさすって見せる市川に、だから代わりに豆腐買ってきたでしょ、と赤木は気にするそぶりも見せずにそう言うと玉杓子を水の張った大振りなガラスの器の中へと差し入れた。ポチャリ、と微かな水音が立つ。

「いくつ?」

 むっすり黙って答えない市川に赤木は苦笑しつつ、ヒョイと豆腐を一つ掬うと市川の小鉢に入れる。さらにその上から、刻んだ万能ネギに茗荷、すりおろしたしょうがを少量乗せ、最後にパラリと鰹節を散らすとタラッと醤油を回しかけた。

「はい」

 そして出来上がった冷奴を市川の前に置く。
 市川の指がテーブルの上をそっとなぞり、やがて置いた器に辿り着く。ツルリとした陶器の 表面をツツ、と下から上へと指の腹でなぞりあげるその指先に、赤木はいつも見入ってしまう。飽きもせずに。市川は赤木のそんな視線に構わず箸を取った。食事に限らず、市川が何かする時に周囲の視線が己に――――己の動かす部位に集中するのはいつものことだ。
 ゆっくりと咀嚼し、飲み込んだところで市川はそっと箸を中央に置かれた皿へと伸ばした。

「他に何買ってきやがったんだ。」
「あー、何だったかな。」

 集まった主婦がはけてから近づいた赤木に店主はちょっと驚いた顔をし、すぐにいつもの営業用の笑顔をその顔に貼り付けた。そして、兄ちゃんくらいの人が買いにくるなんて珍しいね、と朗らかに話しながら赤木を見た。
 豆腐を一丁、という赤木に夕飯の手伝いかい?感心だねと言って店主はさらに別の箱を開けた。
 それは何だと興味を示した赤木に、店主はニコニコ笑いながら袋につめ、豆腐と一緒に赤木に手渡した。
  
「…じゃあ、これは豆腐屋がオマケしてくれたってわけか?」
「いや。」
「買わされたのか。」
「うん。」

 淡々と答える赤木に市川は呆れた声を出した。

「何やってんだお前さんはよ…。」
「今日はこのまま食べても美味いって言うからさ。」

 おかずが冷奴だけじゃ味気ないだろ、と赤木は言うとブスリと箸を目の前の茶色い球体へと突き刺した。行儀が悪いと市川の目が咎めるように赤木に向けられる。まったく、見えていないというのは嘘なんじゃないのか。赤木は小さく息を吐くと、そのまま箸で半分に割った。中からは細々とした橙や黒や緑の色が覗く。ころりと丸い銀杏が零れて来た。

「余ったら、翌日は煮物にしたらいいってさ。」
 家の人に煮てもらいなだって。市川の反応を窺うように口にした言葉に、市川の眉間に皺が刻まれる。そんな市川を笑って見ながら、赤木はさらに言葉を紡いでいく。

「で、これ何?」
「飛竜頭だろ。」

 赤木より先に口に運んだ市川がそっけなく呟く。

「…何?」
「がんもどきとも言うがな。」
「へぇ。」

 感心した声をあげる赤木に、物を知らない餓鬼だなと市川の本日何度めになるかわからない呆れた声が飛ぶ。そして、そう何個も一気に食うようなもんじゃねぇけどな、と言いつつ市川の箸は早くも二個目を掴む。赤木の押し殺した笑い声が静かに居間に響く。
 
「…言っていることとやっていることが一致してないぜ?市川さん。」
「誰かさんの尻ぬぐいしてやってんだ。ありがたく思え。」
 小皿に載せて少量の醤油を回しかけながら、馬鹿みてぇな数買ってきやがって、と市川は険しい声で答える。
「そんな今無理して食べなくても、市川さんが明日煮てくれたらいいだけの話なのに。」
「めんどくせぇ。」

 ピシャリと赤木の言葉を遮ると、次いで市川は豆腐の入っていた小鉢を赤木に向けて差し出した。
 いつのまにか、こちらも空になっていた。赤木は、笑いを隠そうともせずに、市川の器を受け取ると、新たな豆腐を掬ってやり、薬味を散らして醤油を垂らしてやる。

「明日からは一丁じゃなくて二丁にしようか。」

 このままじゃ俺が食う前になくなりそうだ、とクツクツと笑う赤木の笑い声に、玉杓子がガラスの器の縁をカツンと打つ音が高く混じった。







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