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最近の癒し担当は専ら巽さんなわけですが、もう考えれば考えるほど、今我の中で一大ムーブメントなこの若銀巽って要は完全にファンタジー、作中とは全然違うparallelワールドの出来事なんだよね、という結論に自分の中で達しました。
もう完全なる妄想の産物。
私のイメージする巽さんは 調べるのは好きだけど、調べたそれを使って自分がどうこうするのにはあまり興味がない男性です。
素材を吟味して、最高級の素材を取り揃えたら、料理は料理のプロに任せるよ、な。まあ、ご相伴に預かれたら光栄です的なね。
作中で、あまり表立って出てこないのにはそんな一面もあるのかな?と夢見てみたり。
んで、その一歩引いている佇まいだとか、王のされることだからと信頼を寄せる感じ(時に心配を表明しつつ)、離れられない感じが、まさに(何がまさにかはまぁ置いといて)『王と麒麟』(@十二国記)じゃね?と思ったり。(巽さんはこの後、銀さんに額づいたらいいんじゃないの。)
いや、巽さんは殺生を好みはしなさそうだけど 別に慈悲深いわけではないし(博愛主義者ではありそうだけど)、
王が倒れたら倒れたで生きていけそうだけど、それでも『王』である銀さんがいる時は、銀さんを立てるというか。銀さんに身を、命を預けることを厭わない感じがするというか。
それも全然気負った感じじゃなくて。
2人の関係において、好きであるにこしたことはないけど、最早好き嫌いといった感情・関係無しに王である銀さんの傍にいる巽さん…陽子と景麒みたいな。べったりじゃなくていつだって距離があって、でもあの一蓮托生な感じ。
銀さんに言われるまでも銀さんに言うまでもなく、それがいいとか悪いとか、幸せだとか不幸だとか超越した感じで、俺は アンタと共に生きるよ、健やかなる時も病める時も影のようにアンタの希む形で(←ここ大事)アンタの傍にいるよ な巽さん。王の傍らにいることを必然と受け止める男…。銀さんの我侭や無茶を一番受け止められるのは巽さんじゃないかと夢見てます。
巽さんには包容力はないけど、無限の許容力があるんです。あるんです、ってそんな記述はどこにもないですが、若い頃という名のparallelワールドファンタジー風味妄想が止まらない身としてはそんな巽さんをイチオシしています。
そして、そんな巽さんに夢見て夢見て夢見すぎたドリィ夢炸裂の小噺を続きに。
毎度素敵な若銀巽妄想をされるSさまの銀巽ボコり愛&名言に触発されて書いてしまいました…勝手にすみませ…。
(絶対お返事の解釈間違ってる…!!)
もう完全なる妄想の産物。
私のイメージする巽さんは 調べるのは好きだけど、調べたそれを使って自分がどうこうするのにはあまり興味がない男性です。
素材を吟味して、最高級の素材を取り揃えたら、料理は料理のプロに任せるよ、な。まあ、ご相伴に預かれたら光栄です的なね。
作中で、あまり表立って出てこないのにはそんな一面もあるのかな?と夢見てみたり。
んで、その一歩引いている佇まいだとか、王のされることだからと信頼を寄せる感じ(時に心配を表明しつつ)、離れられない感じが、まさに(何がまさにかはまぁ置いといて)『王と麒麟』(@十二国記)じゃね?と思ったり。(巽さんはこの後、銀さんに額づいたらいいんじゃないの。)
いや、巽さんは殺生を好みはしなさそうだけど 別に慈悲深いわけではないし(博愛主義者ではありそうだけど)、
王が倒れたら倒れたで生きていけそうだけど、それでも『王』である銀さんがいる時は、銀さんを立てるというか。銀さんに身を、命を預けることを厭わない感じがするというか。
それも全然気負った感じじゃなくて。
2人の関係において、好きであるにこしたことはないけど、最早好き嫌いといった感情・関係無しに王である銀さんの傍にいる巽さん…陽子と景麒みたいな。べったりじゃなくていつだって距離があって、でもあの一蓮托生な感じ。
銀さんに言われるまでも銀さんに言うまでもなく、それがいいとか悪いとか、幸せだとか不幸だとか超越した感じで、俺は アンタと共に生きるよ、健やかなる時も病める時も影のようにアンタの希む形で(←ここ大事)アンタの傍にいるよ な巽さん。王の傍らにいることを必然と受け止める男…。銀さんの我侭や無茶を一番受け止められるのは巽さんじゃないかと夢見てます。
巽さんには包容力はないけど、無限の許容力があるんです。あるんです、ってそんな記述はどこにもないですが、若い頃という名のparallelワールドファンタジー風味妄想が止まらない身としてはそんな巽さんをイチオシしています。
そして、そんな巽さんに夢見て夢見て夢見すぎたドリィ夢炸裂の小噺を続きに。
毎度素敵な若銀巽妄想をされるSさまの銀巽ボコり愛&名言に触発されて書いてしまいました…勝手にすみませ…。
(絶対お返事の解釈間違ってる…!!)
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突如現れた男は、いきなり思い切り巽の横っ面を張り飛ばした。口中に鉄の味が広がる。
油断したつもりはない。
だが、予期していなかったのは確かだ。
見せしめ目的でなければ、奴らは見えるところに傷はつけない。
言うなれば、この世界での暗黙のルール。
巽は勝てないが、けれど決して負けない為の地盤。根幹。それを。
この男は、現れててものの2秒で崩しやがった。
たまらず、足がふらついた。
細い見かけによらず、重いパンチだった。
「…おいっ!」
先ほどまで、散々巽に攻撃を加えていた男たちが、一変して焦った声を出す。
「平井!!」
「はい?」
「何やってんだお前はよぉ!」
「何やってんだって、俺に言わせりゃアンタ方の方が何やってんだですよ。」
そう言うと、辺りを見渡した。巽がのした2人が薄汚い路地に転がっている。
「最初が肝心ってよく言ってるじゃないですが。」
「だからっていきなり顔を殴るやつが…。」
まだ頭が定まらない気がする。ふらつく頭で必死に体勢を整える。
仲間割れか。もめている最中にこのままここから逃走してしまおうか、とも思ったがその為にはあの男たちの間を突破せねばならない。動揺している男たちの間を割るのは、それほどハードルが高くない気がするが、あの平井と呼ばれている新手の男は見るからに厄介だ。これまでの相手とは、明らかに違う。やばい匂いがする。
まだ尚も言い募るヤクザの言葉を聞き流して、平井と呼ばれた男は巽と向き合う。
「こいつが持っていようがいまいが、どうせここまできたらバラしちゃうんでしょ?」
だったら、今更顔がどうこうとか、どうでもいいじゃないですか。
まぁでも見えないところが良いって言うなら、そういうと、一気に間合いをつめ、平井は巽の鳩尾へと拳を叩き込んだ。
「かっ…は、」
これまで、少なくない数の修羅場を乗り切ってきたつもりだった。だが、今回は―――相手が悪すぎる。
呻き声と共に、身体が前に折れる。地面に滴が飛ぶ。この際、内出血なんざどうでもいい。肋骨の何本、腕の一本は許容範囲内だ。ただ、内臓破裂していないことだけを願いつつ巽は膝を折った。たちまち、脂汗が滲み出てくる。同時に、ぶるりと震えが背筋を伝う。
「顔、あげな。」
平井の足が、蹲った視界に入る。細く尖った、革靴。
「…。」
それが徐々に近づき、はっきりと編み上げた靴紐が見えた次の瞬間。
「聞こえなかったか?」
笑みを含んだ声と鈍い音と共に、視界が大きく揺れた。
それはまるで、スローモーションのようだった。
黒い上下、悠然と笑う顔、はためく襟。靡く髪。飛び散る飛沫。そして、ビルとビルの間に細く切り取られたような空を視界に収めて―――巽は男のあの細く尖った靴の爪先で思い切り蹴り上げられたことに気付いた。後ろ手でドッ、と尻餅をつく体勢へと変わる。
蹴り上げられた衝撃で胸元のアクセサリーのチェーンが切れ、地面に愛用のサングラスと共に落ちる。チラッと巽の視線が流れた。それを見逃すはずもなく、平井は上からグシャリと踏み潰した。ぺキ、ともバキ、とも何ともいえない貧相な音を立てて、巽愛用のサングラスと、ペンダントトップは無残な姿に変わり完全にその一生を終えた。
そのまま平井はふらつく巽の後頭部へと手を回し、巽の髪を容赦ない力で引っ張った。ブチブチ、と髪が切れる音をどこか人事のように巽は聞いた。
今はまだ赤く腫れ上がっただけの顔を一瞥すると、平井はにぃと笑った。ずい、と顔を近づける。
「へぇ。いい面してるじゃねぇか。」
そう言うと、上着のポケットから何かを取り出す。チャキチャキチャキと、と小刻みに金属と金属が触れ合う音だけが、響く。
「だけど、その髪はちょっといただけないかな。」
そう言うと、後頭部を掴んでいた指を毛先へと滑らせていく。
チャキチャキチャキチャキチャキ。巽の耳元で、鋏が小気味いい音を立てる。
「で、誰が持ってんだ?」
「…。」
「なぁ、どっちでもいいんだ俺は。」
お前がだんまりを決め込むって言うなら、お前が吐くまでボコルだけだし、お前に何かあったら別の誰かが公開するってんなら、そいつの在り処を吐くまでお前をボコルだけなんだから。
「要は公開される前に、潰せればいいだけの話なんだから。」
まぁ後者の場合だったら、手始めに、というとさっきまで空切りしていた鋏を一旦静止させると、ピタ、と巽の頬に押し当てた。火照った頬に冷たい、と思う間もなく鋏は無遠慮に巽の髪を挟んだ。
―――ジョキッ。
「これでも送ってみようかね。」
「…っ!!」
「送られてきたのが男の髪ってのも、まぁ乙なもんじゃない?」
そう軽口を叩きながら、再び平井はチャキチャキと鋏を鳴らす。そんな平井の行動に、平井以外の全員が、固まる。指に掴み切れなかった髪がハラハラと地面に落ちる。そこで口を開けたのは、巽だけだった。
「アンタ…。」
「平井だ。」
「平井サンよ、仲間にひかれてるぜ…?」
「仲間、ねぇ。」
そう言うと、平井はツンツンと鋏で服の上から軽く押すと、そのまま鋏の先でゴソゴソと巽の服をまさぐり始めた。プツプツ、とボタンを留めている糸を切っていく。外すのが面倒なのか。それを冷静に見下ろしていると、平井が軽く首を傾げた。
「ああ、でもこうやって捕まった時に剥かれるのなんてアンタにはお見通しか。」
アンタ、明らかに慣れてそうだもんな、そう言うと平井は鋏の向きを持ち替えた。胸に―――垂直に。
「『中』?」
初めて、巽の顔からはっきりと血の気が引いた。
こいつは、やる。
しかもなかったらなかったで、絶対かまわなそうな口ぶりで『ここには、なかった』としか言わなそうだ。
そうまでして、命を張ってまで死守したいネタでもない。そもそも。巽は漸く口を開いた。顎で足元をしゃくる。
「アンタらが探してるもんなら、そこだよ。」
「何。やけに素直だね。」
「だってもう、それ証拠の体なしてないし。」
その言葉に、平井だけでなく事の成り行きを見守るばかりだったヤクザたちが途端に色めき立つ。そう、こいつらがあんなに必死になって捜し求めていた証拠は、とっくのとうに廃棄済だ。
この、目の前の男の足によって。
本当に大事なものは、常に身につけておくに限る。巽にとっては、それはサングラスでありあのアクセサリーだった。パッと見わからないが、スクエア型のペンダントトップの中には、ICチップが隠れていた。
あれだけ、バラバラにされたら修復不可能だろう。
だが、平井だけはどこかつまらなさそうに「あ、そうなの?」とだけ言うと再び手慰みにか鋏をチャキチャキチャキ鳴らし始めた。平井が現れてからはどこか遠巻きに巽を眺めていたヤクザたちがすごむ。
「おい、嘘じゃねぇだろうな。」
「ああ。」
こんな目に合わされてなおも嘘をつく必要もない。それがわかったのか、平井は一旦鋏を下げた。一歩巽から離れる。
「じゃあこれで一件落着、か。」
そのあまりの興味が失せたと言わんばかりの声に、あまりにあっさりと身をひいた平井に巽が意外そうな目を向ける。それがわかったのだろう。平井が笑う。
「途中経過なんざどうでもいい性質なんだ。結末さえ、こちらの希望通りなら。」
文句は言わねぇだろ?あの人もよ。
そう言いながら、背後を振り返る。完全に平井に主導権を握られていた男たちが低く唸る。
「だが、それは壊れたかもしれないがまだコピーが…。」
「それはないと思うぜ。」
「何でお前にそれがわかる?」
「こいつにとっては、今回のネタも、他の屑ネタと同等の価値しかねぇからよ。」
「…だが。」
「もしあったら、俺がまた潰せばいいだけの話だろ?」
この足で。そう言うと、平井は手からパラパラと先ほど切り落とした巽の髪をサングラスの上に落とした。平井はトドメだと言わんばかりに、巽のサングラスごとそれを踏み潰した。
巽が叩きのめした仲間を連れて、ヤクザな男たちが去っていく。平井はそれをニヤニヤと笑いながら見送る。
巽は、傷む身体を壁に寄りかからせながらやっと口を開いた。先ほどよりも痛みが増して、口も開けにくくなってきた。
「アンタは…何で行かないわけ?」
「んー…。」
平井は巽の前にやってくると、ゆっくりと屈んだ。直後、ぬるりとした感触が頬を伝った。巽は、一瞬何が起こっているのかわからなかった。平井はぴちゃ、と音を立てて顎先を伝った汗を舌で受け止めると、そのまま己が殴った拍子に出来た傷口を、べろりと舐め上げた。
「…っつ」
「染みるか?」
「…そうね。」
巽の返答に平井は何がおかしいのか盛大に噴出すと、続いて高らかに宣言した。
「なぁなぁ、お前気に入ったよ。俺と一緒に来ない?」
平井の誘い文句に、巽はこれまでで一番脱力したように溜息を吐いた。
「普通ここで俺を誘うか?」
「俺はね。」
「アンタ…」
「平井だ。平井銀二。」
「平井さん、アンタ…オカシイよ。」
「よく言われる。」
巽の言葉をしれっと流すとそれにね、と平井は顔を寄せた。
「まだあいつら、お前のこと疑ってるから俺と一緒にいた方がいいと思うよ?」
あいつ等、俺と俺のものには手ぇ出さないから。そう言うと、先ほどと逆側の髪を一掴みすると、鋏でジャキン!と切る。
「ちょ…っ」
「え、だって片側だけ短いとおかしでしょ?」
「そりゃそうだけどさ…。」
「後でちゃんと切り揃えてやるよ。」
平井がチャキン、と刃先を天に向ける。刃先が鈍く光る。
「アンタがかよ…。」
そこまで言って、巽はまぁ別にいいけどと諦めたように息を吐いた。
「お前名前は?」
「…巽。巽有三。」
巽ね、と平井は口中で小さく呟くと、ほら立てよ巽、と平井が手を差し出す。巽はやれやれ、とだけ言うと素直にその白い手を取った。
終
頂いたお言葉を胸に書いたら、暴走しまくりに。
自重しないとこうなります、ということで(?)背を押してくださったシバマタさまに、勝手に捧げます。(笑)
突如現れた男は、いきなり思い切り巽の横っ面を張り飛ばした。口中に鉄の味が広がる。
油断したつもりはない。
だが、予期していなかったのは確かだ。
見せしめ目的でなければ、奴らは見えるところに傷はつけない。
言うなれば、この世界での暗黙のルール。
巽は勝てないが、けれど決して負けない為の地盤。根幹。それを。
この男は、現れててものの2秒で崩しやがった。
たまらず、足がふらついた。
細い見かけによらず、重いパンチだった。
「…おいっ!」
先ほどまで、散々巽に攻撃を加えていた男たちが、一変して焦った声を出す。
「平井!!」
「はい?」
「何やってんだお前はよぉ!」
「何やってんだって、俺に言わせりゃアンタ方の方が何やってんだですよ。」
そう言うと、辺りを見渡した。巽がのした2人が薄汚い路地に転がっている。
「最初が肝心ってよく言ってるじゃないですが。」
「だからっていきなり顔を殴るやつが…。」
まだ頭が定まらない気がする。ふらつく頭で必死に体勢を整える。
仲間割れか。もめている最中にこのままここから逃走してしまおうか、とも思ったがその為にはあの男たちの間を突破せねばならない。動揺している男たちの間を割るのは、それほどハードルが高くない気がするが、あの平井と呼ばれている新手の男は見るからに厄介だ。これまでの相手とは、明らかに違う。やばい匂いがする。
まだ尚も言い募るヤクザの言葉を聞き流して、平井と呼ばれた男は巽と向き合う。
「こいつが持っていようがいまいが、どうせここまできたらバラしちゃうんでしょ?」
だったら、今更顔がどうこうとか、どうでもいいじゃないですか。
まぁでも見えないところが良いって言うなら、そういうと、一気に間合いをつめ、平井は巽の鳩尾へと拳を叩き込んだ。
「かっ…は、」
これまで、少なくない数の修羅場を乗り切ってきたつもりだった。だが、今回は―――相手が悪すぎる。
呻き声と共に、身体が前に折れる。地面に滴が飛ぶ。この際、内出血なんざどうでもいい。肋骨の何本、腕の一本は許容範囲内だ。ただ、内臓破裂していないことだけを願いつつ巽は膝を折った。たちまち、脂汗が滲み出てくる。同時に、ぶるりと震えが背筋を伝う。
「顔、あげな。」
平井の足が、蹲った視界に入る。細く尖った、革靴。
「…。」
それが徐々に近づき、はっきりと編み上げた靴紐が見えた次の瞬間。
「聞こえなかったか?」
笑みを含んだ声と鈍い音と共に、視界が大きく揺れた。
それはまるで、スローモーションのようだった。
黒い上下、悠然と笑う顔、はためく襟。靡く髪。飛び散る飛沫。そして、ビルとビルの間に細く切り取られたような空を視界に収めて―――巽は男のあの細く尖った靴の爪先で思い切り蹴り上げられたことに気付いた。後ろ手でドッ、と尻餅をつく体勢へと変わる。
蹴り上げられた衝撃で胸元のアクセサリーのチェーンが切れ、地面に愛用のサングラスと共に落ちる。チラッと巽の視線が流れた。それを見逃すはずもなく、平井は上からグシャリと踏み潰した。ぺキ、ともバキ、とも何ともいえない貧相な音を立てて、巽愛用のサングラスと、ペンダントトップは無残な姿に変わり完全にその一生を終えた。
そのまま平井はふらつく巽の後頭部へと手を回し、巽の髪を容赦ない力で引っ張った。ブチブチ、と髪が切れる音をどこか人事のように巽は聞いた。
今はまだ赤く腫れ上がっただけの顔を一瞥すると、平井はにぃと笑った。ずい、と顔を近づける。
「へぇ。いい面してるじゃねぇか。」
そう言うと、上着のポケットから何かを取り出す。チャキチャキチャキと、と小刻みに金属と金属が触れ合う音だけが、響く。
「だけど、その髪はちょっといただけないかな。」
そう言うと、後頭部を掴んでいた指を毛先へと滑らせていく。
チャキチャキチャキチャキチャキ。巽の耳元で、鋏が小気味いい音を立てる。
「で、誰が持ってんだ?」
「…。」
「なぁ、どっちでもいいんだ俺は。」
お前がだんまりを決め込むって言うなら、お前が吐くまでボコルだけだし、お前に何かあったら別の誰かが公開するってんなら、そいつの在り処を吐くまでお前をボコルだけなんだから。
「要は公開される前に、潰せればいいだけの話なんだから。」
まぁ後者の場合だったら、手始めに、というとさっきまで空切りしていた鋏を一旦静止させると、ピタ、と巽の頬に押し当てた。火照った頬に冷たい、と思う間もなく鋏は無遠慮に巽の髪を挟んだ。
―――ジョキッ。
「これでも送ってみようかね。」
「…っ!!」
「送られてきたのが男の髪ってのも、まぁ乙なもんじゃない?」
そう軽口を叩きながら、再び平井はチャキチャキと鋏を鳴らす。そんな平井の行動に、平井以外の全員が、固まる。指に掴み切れなかった髪がハラハラと地面に落ちる。そこで口を開けたのは、巽だけだった。
「アンタ…。」
「平井だ。」
「平井サンよ、仲間にひかれてるぜ…?」
「仲間、ねぇ。」
そう言うと、平井はツンツンと鋏で服の上から軽く押すと、そのまま鋏の先でゴソゴソと巽の服をまさぐり始めた。プツプツ、とボタンを留めている糸を切っていく。外すのが面倒なのか。それを冷静に見下ろしていると、平井が軽く首を傾げた。
「ああ、でもこうやって捕まった時に剥かれるのなんてアンタにはお見通しか。」
アンタ、明らかに慣れてそうだもんな、そう言うと平井は鋏の向きを持ち替えた。胸に―――垂直に。
「『中』?」
初めて、巽の顔からはっきりと血の気が引いた。
こいつは、やる。
しかもなかったらなかったで、絶対かまわなそうな口ぶりで『ここには、なかった』としか言わなそうだ。
そうまでして、命を張ってまで死守したいネタでもない。そもそも。巽は漸く口を開いた。顎で足元をしゃくる。
「アンタらが探してるもんなら、そこだよ。」
「何。やけに素直だね。」
「だってもう、それ証拠の体なしてないし。」
その言葉に、平井だけでなく事の成り行きを見守るばかりだったヤクザたちが途端に色めき立つ。そう、こいつらがあんなに必死になって捜し求めていた証拠は、とっくのとうに廃棄済だ。
この、目の前の男の足によって。
本当に大事なものは、常に身につけておくに限る。巽にとっては、それはサングラスでありあのアクセサリーだった。パッと見わからないが、スクエア型のペンダントトップの中には、ICチップが隠れていた。
あれだけ、バラバラにされたら修復不可能だろう。
だが、平井だけはどこかつまらなさそうに「あ、そうなの?」とだけ言うと再び手慰みにか鋏をチャキチャキチャキ鳴らし始めた。平井が現れてからはどこか遠巻きに巽を眺めていたヤクザたちがすごむ。
「おい、嘘じゃねぇだろうな。」
「ああ。」
こんな目に合わされてなおも嘘をつく必要もない。それがわかったのか、平井は一旦鋏を下げた。一歩巽から離れる。
「じゃあこれで一件落着、か。」
そのあまりの興味が失せたと言わんばかりの声に、あまりにあっさりと身をひいた平井に巽が意外そうな目を向ける。それがわかったのだろう。平井が笑う。
「途中経過なんざどうでもいい性質なんだ。結末さえ、こちらの希望通りなら。」
文句は言わねぇだろ?あの人もよ。
そう言いながら、背後を振り返る。完全に平井に主導権を握られていた男たちが低く唸る。
「だが、それは壊れたかもしれないがまだコピーが…。」
「それはないと思うぜ。」
「何でお前にそれがわかる?」
「こいつにとっては、今回のネタも、他の屑ネタと同等の価値しかねぇからよ。」
「…だが。」
「もしあったら、俺がまた潰せばいいだけの話だろ?」
この足で。そう言うと、平井は手からパラパラと先ほど切り落とした巽の髪をサングラスの上に落とした。平井はトドメだと言わんばかりに、巽のサングラスごとそれを踏み潰した。
巽が叩きのめした仲間を連れて、ヤクザな男たちが去っていく。平井はそれをニヤニヤと笑いながら見送る。
巽は、傷む身体を壁に寄りかからせながらやっと口を開いた。先ほどよりも痛みが増して、口も開けにくくなってきた。
「アンタは…何で行かないわけ?」
「んー…。」
平井は巽の前にやってくると、ゆっくりと屈んだ。直後、ぬるりとした感触が頬を伝った。巽は、一瞬何が起こっているのかわからなかった。平井はぴちゃ、と音を立てて顎先を伝った汗を舌で受け止めると、そのまま己が殴った拍子に出来た傷口を、べろりと舐め上げた。
「…っつ」
「染みるか?」
「…そうね。」
巽の返答に平井は何がおかしいのか盛大に噴出すと、続いて高らかに宣言した。
「なぁなぁ、お前気に入ったよ。俺と一緒に来ない?」
平井の誘い文句に、巽はこれまでで一番脱力したように溜息を吐いた。
「普通ここで俺を誘うか?」
「俺はね。」
「アンタ…」
「平井だ。平井銀二。」
「平井さん、アンタ…オカシイよ。」
「よく言われる。」
巽の言葉をしれっと流すとそれにね、と平井は顔を寄せた。
「まだあいつら、お前のこと疑ってるから俺と一緒にいた方がいいと思うよ?」
あいつ等、俺と俺のものには手ぇ出さないから。そう言うと、先ほどと逆側の髪を一掴みすると、鋏でジャキン!と切る。
「ちょ…っ」
「え、だって片側だけ短いとおかしでしょ?」
「そりゃそうだけどさ…。」
「後でちゃんと切り揃えてやるよ。」
平井がチャキン、と刃先を天に向ける。刃先が鈍く光る。
「アンタがかよ…。」
そこまで言って、巽はまぁ別にいいけどと諦めたように息を吐いた。
「お前名前は?」
「…巽。巽有三。」
巽ね、と平井は口中で小さく呟くと、ほら立てよ巽、と平井が手を差し出す。巽はやれやれ、とだけ言うと素直にその白い手を取った。
終
頂いたお言葉を胸に書いたら、暴走しまくりに。
自重しないとこうなります、ということで(?)背を押してくださったシバマタさまに、勝手に捧げます。(笑)
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